全国旅行支援の不正受給とは？

宿泊事業者などが旅行支援金を水増し請求するなどの行為を指します。

紙クーポン廃棄の問題はなぜ起きた？

事業途中で電子クーポンへ移行したため、既に印刷されていた紙クーポンが無駄になりました。

全国旅行支援の不正受給問題とその影響｜今後の課題とは？

全国旅行支援と県民割支援事業における不正受給や、紙クーポンの廃棄問題が会計検査院の調査によって明らかになりました。本記事では、これらの問題の背景と今後の課題について詳しく解説します。

全国旅行支援は、新型コロナウイルスの影響を受けた観光業界を支援する目的で導入された施策です。2021年4月から「県民割支援」が開始され、その後「全国旅行支援」として2022年10月から2023年12月まで実施されました。

会計検査院の調査によると、不正請求は62件発覚し、約3億円にのぼります。そのうち約2.5億円は未返還のままとなっています。

事業開始当初、多くの自治体が紙クーポンを採用しましたが、2023年1月以降、国のデジタル化推進に伴い電子クーポンへ移行。その結果、全国で計3,269万枚（3.8億円分）の紙クーポンが廃棄されました。

今回の不正受給問題や紙クーポンの大量廃棄は、制度設計の甘さや管理体制の不備を露呈するものでした。筆者自身、過去に同様の公的支援制度を利用した経験があり、今回の問題には特に関心を持っています。

ある温泉旅館の経営者は「コロナ禍で売上が激減し、全国旅行支援のおかげで何とか持ちこたえた」と話します。しかし、一方で「申請手続きが煩雑で、書類の不備を指摘されることが多かった」とも語っていました。適正な申請が難しい仕組みが、不正の温床となった可能性もあります。

旅行者の立場からすると、クーポン制度の変更が混乱を招いた事例もあります。例えば、紙クーポンを前提に計画していた観光客が、現地で電子クーポンのみの対応と言われ、利用できなかったというケースが発生しました。制度変更時の周知不足が問題だったと言えるでしょう。

愛知県の事例では、事務局が人件費を不正請求していたことが発覚しました。内部告発によって明るみに出たものの、チェック体制が機能していなかったことが問題視されています。このような不正を防ぐためには、第三者機関による監査を徹底する必要があります。

紙クーポンが大量に廃棄されたことについて、ある自治体の担当者は「最初から電子クーポンで統一すべきだった」と振り返ります。印刷業者との契約や流通の都合もあったとはいえ、結果として多額の税金が無駄になったのは否めません。

例えば、ドイツではデジタルバウチャー制度を導入し、旅行者がスマートフォンで直接支援を受けられる仕組みを整えました。日本もより透明性が高く、無駄を削減できる仕組みを目指すべきでしょう。

不正受給を防ぐために、事業者への審査基準を厳格化し、定期的な監査を強化する必要があります。

事業変更時には、現場の実情を考慮し、無駄を最小限に抑える計画が求められます。

交付金の配分根拠資料の適切な保存を義務付け、説明責任を果たす仕組みを確立することが重要です。

全国旅行支援の不正受給や紙クーポン廃棄の問題は、税金の適正な活用という観点からも大きな課題です。今後、より透明性の高い施策運営が求められます。