訪問介護の苦境：報酬引き下げがもたらす影響と今後の展望

訪問介護事業の休廃業が急増

2024年、訪問介護事業の休廃業・解散件数は448件に達し、介護業界全体の7割以上を占めました。これは前年より2割増加しており、介護報酬の引き下げが主な要因と考えられています。

訪問介護報酬引き下げの影響

訪問介護は、在宅での生活を支える重要なサービスですが、2024年度の介護報酬改定で基本報酬が減額されました。これにより、

• ヘルパーの確保が困難に
• 事業の収支が悪化
• 介護サービスの提供が困難に

事業者の苦境と実際の事例

青森県の東北町社会福祉協議会では、常勤ヘルパー4人が一斉に退職し、訪問介護事業が休止となりました。また、大阪府茨木市の「じんないケアセンター喜楽」では、ヘルパー不足と介護報酬の低さが原因で訪問介護事業を廃止しています。

自治体による支援策

この状況を受け、新潟県村上市では訪問介護事業者に対して減収補填の支援金を支給するなどの対応が行われています。ガソリン価格の高騰を考慮し、車両1台につき月3千円の補助も実施されています。

筆者の視点

筆者自身も、訪問介護を利用している家族がいるため、この問題を身近に感じています。特に、地方に住む高齢者にとって訪問介護は生活を維持する上で欠かせないものです。例えば、秋田県に住む80代の知人は、自宅での生活を続けるために週3回の訪問介護を受けていました。しかし、事業所が人手不足でサービスの提供時間を短縮せざるを得ず、日常生活に大きな影響が出ています。

また、東京都内のある訪問介護事業者は、ヘルパーの確保が困難になったため新規利用者の受け入れを停止せざるを得ませんでした。これにより、退院後に訪問介護を必要とする患者が受け入れ先を見つけられず、病院に留まらざるを得ないケースも発生しています。

現場のヘルパーの声を聞くと、「時給が低く、交通費も十分に支給されないため、仕事を続けるのが難しい」という声が多く上がっています。特に都市部では、訪問先への移動時間が長くなることもあり、実際に介護を行っている時間よりも移動時間が多いというケースもあります。

一方で、自治体の支援が成功している例もあります。例えば、長野県のある市では、訪問介護事業者に対して独自に報酬を上乗せし、ヘルパーの賃金を確保する制度を導入しました。その結果、人材の流出を防ぎ、サービスの維持につながったという報告があります。

筆者としては、介護報酬の見直しはもちろんのこと、地域ごとの実情に応じた支援策が求められると考えます。報酬の引き上げだけでなく、移動費の補助や研修制度の充実も重要なポイントになるでしょう。

今後の展望と解決策

このままでは訪問介護事業の撤退が続き、介護サービスを必要とする人々が支援を受けられなくなる可能性があります。解決策として、

• 介護報酬の再検討
• ヘルパーの待遇改善
• 自治体の積極的な支援

が求められます。

FAQ: 訪問介護の現状について

• Q: 介護報酬の引き下げがもたらす最大の問題は？
  A: ヘルパーの確保が難しくなり、サービス提供が困難になることです。
• Q: 自治体の支援策にはどのようなものがありますか？
  A: 訪問介護事業者への補助金支給や交通費の補助などがあります。